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「愛がすべてのこと、明日すべてのもの」 —— 奇妙礼太郎「愛がすべてのこと」

2026.03.05

music

10代の頃、奇妙さんの歌声を初めて聴いたとき、私は、何にも置き換えられない瞬間に触れた気がした。その声が、心臓のいちばん深い場所に直接触れてくるようだった。

ざらついていて、やさしくて、正直すぎるほど力強くて、不思議と救われた気持ちになる。

きっとこの先も、ずっと奇妙さんの音楽を聴き続けたい。そうふわりと確信した。幾度となく足を運んだ六本木と横浜のビルボードライブ。数々の公演を見てきて、それぞれの音楽に固有の魅力と素晴らしさがあるけれど、私の中の「特別」は、いつも奇妙さんが毎年開催するビルボードライブだ。彼の歌声は、人生がこんな包容力で包まれていていいのだと、教えてくれる。

魅力は、歌声だけではない。奇妙礼太郎と BAND が一緒に演奏すると、一つひとつの音が魂の奥まで突き刺さるように響く。台北の夜も、忘れたくない記憶として、きっと心に残り続けるだろう。奇妙礼太郎の魅力は、音楽スタイルの独自性だけではない。彼は「永遠の愛を誓わない歌があってもいい」と言う。人は誰かの所有物ではないから。愛は運転免許の更新みたいに、毎年確認すればいい。

「今年もまたこの日が来ましたけど、来年も一緒にいますか?」と。

その率直さとユーモアが、愛を束縛ではなく、自由なダンスへと変えてくれる。

彼は歌の中で何度も「踊る」という言葉を書く。技巧を誇示するダンスではなく、人間のもっとも原初的なコミュニケーションとしてのダンス。言葉より前に、身体で、声で、存在そのもので感情を伝える。たとえ喧嘩をしていても、誰かが突然踊り出したら、世界は少し止まるかもしれない。奇妙礼太郎の音楽は、まさに時間を止める瞬間だ。

彼は「誰がこの歌を理解できるか」を意図的に限定しない。若い恋人のためだけでも、特定の性別や属性のためでもない。すべての人が音楽に抱きしめられる価値があると、信じてくれている。排他的でもなく、誇示するでもなく、見下ろすでもない、静かなやさしさ。

「自分にとっていちばん大切なものは、もう持っているんです」友達、日常、語り合い、酒を飲む夜。それこそが人生のすべてだと彼は言う。比較を追わず、順位に怯えず、ただ誠実に歌い、誠実に生きる。

彼はこうも語っている。「別に失敗しても、もともと何もなかったから、どうでもいいもんな。やってる仕事のことは大事に思ってるけど、同じくらいどうでもいいって思っておきたい」執着しすぎれば、人は終わった場所に囚われてしまう。そんな軽やかで正直な生き方の哲学が、彼の音楽にも深く滲んでいる。だからこそ、奇妙礼太郎の歌声は、理解されたという感覚を与え、弱さをそのまま許し、静かに抱きしめてくれるのかもしれない。

台北で、私たちはもうすぐ奇妙礼太郎 BAND と出会う。共に彼の音楽の中で踊ろう。

永遠の愛を誓わないという愛のかたちの中で、「今」と「明日」の間で、自分だけの “オールウェイズ” を、静かに見つけよう。


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