

昭和レトロの潮流とともに、シティ・ポップは現代の日本の音楽シーンに再び大きな波紋を広げました。かつて一世を風靡した時代の夢や幻を映し出していたこのジャンルは、今や単なるノスタルジーではなく、現代人が抱く心地よい生活やリゾートへの憧れを象徴するものとなっています。
そしてLUCKY TAPESこそが、このムーブメントの中で「都市のロマンス」を最も的確に捉えた、象徴的なバンドだと言えるでしょう。
「脆さ」を「空気感(アンビエント)」へと変える
2014年の結成以来、LUCKY TAPESの音楽は、忙しない都市生活にハニーカラーの輝きを添えてきました。フロントマンでありキーボードも担当する高橋海を中心に、ジャズ、ソウル、ファンク、そしてポップスを融合させた、軽やかでアンニュイなトーンが特徴です。マイケル・ジャクソンやアース・ウィンド&ファイアー、プリンスといったアーティストに影響を受けた高橋海は、ブラックミュージックのグルーヴと、J-POP特有の繊細な感性を組み合わせ、聴く者を自然と踊らせてしまいます。
初期の『The SHOW』からスタイルを確立した『Cigarette & Alcohol』に至るまで、LUCKY TAPESは現代生活の脆さを、洗練された「糖衣」で包み込むことに成功しました。メジャーシーンで大きな支持を得るきっかけとなった映画主題歌「MOON」や、台北で撮影され、地域を超えた都市のイマジネーションを繋いだシングル「22」は、彼らが現代の「雰囲気」を創り出すキュレーターであることを証明しています。
おすすめ曲 01:LUCKY TAPES – 22 (Official Music Video)
洗練から真実への回帰
音楽的な成長過程において、クリエイターは往々にして「複雑さ」から「真実」への転換を経験します。アルバム『Blend』のリリース後、高橋海はそれまでの洗練されたファッショナブルなジャズのアレンジメントに満足感を覚え、同時に「既成概念を壊したい」という思いを抱くようになりました。そうして2022年に発表された『Bitter!』では、より深く成熟したレイヤーを見せています。
タイトル曲の「Bitter!」は、グラスに酒を注ぐ氷の音から始まり、どこか「千鳥足」のような不安定な音符が、かつての恋人に門前払いされる冷淡さを物語ります。この時期の制作において鍵を握ったのはギターの高橋健介でした。彼はそれまであまり使用しなかった「歪んだ音色(Fuzz / Distortion)」を取り入れ、甘さの中に「狂乱」を忍ばせようとしました。健介による「ギターは料理におけるスパイス。ある時は味を引き締めるペッパーであり、ある時は臭みを消すローリエである」という比喩は非常に魅力的です。この細部への執着こそが、レイドバックした雰囲気の中でもLUCKY TAPESが音楽的質感を保ち続けている理由なのです。
おすすめ曲 02:LUCKY TAPES - BITTER! [Official Lyric Video]
新たな始まりの『1991』と国境を越えた対話
2023年、メンバーの脱退を経て、LUCKY TAPESは正式に高橋海のソロプロジェクトへと移行しました。3年ぶりとなった最新EP『1991』には、「うつろい」や「ASOBO」などが収録され、新体制下での実験的かつ感情豊かな一面を披露しています。
さらに、続いてリリースされたニューシングル「真夏のトワイライト」では、同じくAORやシティ・ポップの影響を色濃く受けたタイの人気バンド・Polycatとコラボレーション。軽快なベースラインとドリーミーなシンセサイザーの音色が交差し、夏の終わりの空がオレンジ色に染まる瞬間のときめきを描き出しました。歌詞には「もう戻れない夏」への淡い切なさが滲んでいます。
おすすめ曲 03:真夏のトワイライト (Single)
バンドとしての火花から、現在は高橋海一人という強い意志へと姿を変えても、LUCKY TAPESは依然として「現実はビターでも、私たちは優雅に踊り続ける」という姿勢を伝えています。2月1日、彼らはBillboard Live TAIPEIのステージに立ちます。もし、あなたがかつてあの軽やかでノスタルジックなロマンスに魅了されたことがあるのなら、この機会を絶対に見逃さないでください。
