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[Live Report] Grooving side by side! S.A.R.、Billboard Live TAIPEIで見せた即興グルーヴ

2026.04.01

music

Hitomi Xu

Hitomi Xu

3月17日、S.A.R.はBillboard Live TAIPEIにて、圧倒的な音楽体験をもたらした。平日の火曜の夕暮れにもかかわらず、初の台湾公演となるこのステージには多くのファンが集まり、熱気に満ちた空間が広がっていた。

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約90分にわたるライブでは、〈Moon〉、〈POOL〉、〈Side by Side〉、〈Back to Wild〉などを含む十数曲を畳みかけるように披露。ジャズ、ロック、ヒップホップ、さらにはレゲエまでを自在に横断しながら、S.A.R.ならではの“kool aesthetic”を余すところなく提示した。

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厚みのあるインストゥルメンタルの上で、ボーカルSantaのパワフルかつ深みのある歌声が全編を貫く。高音域に至っても揺るがない安定感と表現力で、ひとたび声を発すれば瞬時に観客を惹き込む存在感を放っていた。音源ではあえてボーカルを前面に出しすぎないミックスが特徴的だが、ライブでは低域の安定した流れに支えられ、ボーカルがより立体的に浮かび上がる。その結果、現代日本R&Bの中でも特に繊細でありながら、D’Angeloを思わせる抗いがたいソウルフルなグルーヴが際立っていた。これこそが、S.A.R.のライブを体験すべき理由だろう。

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もう一つの大きな見どころは、ギタリスト兼MCのImu Samだ。ギターエフェクトの操作とラップを自在に行き来し、Santaとの絶妙な掛け合いでステージにさらなる彩りを加えていた。ベーシストEnoが体調により欠席する中でも、プログラムされたベースサウンドは卓越したPAによって生演奏さながらの存在感を放ち、ドラマーMay Changの驚異的な安定感、ブラシや異なるスティックの使い分けと相まって、リズムセクションを強固に支えていた。さらに、キーボーディストTaroによる緻密なリズム構築とレイヤーの積み重ねは、目を閉じても音の火花が感じられるほどの立体感を生み出し、観客を惹きつけて離さなかった。

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〈Side by Side〉、〈UPTOWN〉、〈Back to Wild〉、〈POOL〉といった楽曲は、いずれも都会的なR&Bの魅力を帯びている。音楽性としての統一感を保ちながらも、キーボードやギターエフェクトによるライブならではの装飾によって、音源とは異なる表情を見せた。Imu SamとSantaの身体表現からは、彼ら自身がこの演奏を心から楽しんでいる様子が伝わってくる。

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〈Moon〉では、レコーディング版のイントロで使用されているオートチューンを再現。滑らかなR&Bにエレクトロニックな質感が加わり、楽曲に新たな奥行きをもたらした。Santaは扱いが難しいオートチューンを巧みに操り、音場の中で変化する音色のニュアンスを観客に体感させる。Taroはゴスペル的な響きを思わせるキーボード音色を選び、この楽曲にソウルの質感を保ちながら新たな解釈を与えていた。

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特に印象的だったのは〈Kaminari〉だ。メンバー自身も推すこの楽曲は、S.A.R.のライブにおける多様性と変化を象徴している。複雑に展開するリズムの中で、May Changのドラムワークと豊かなタムの響きが際立ち、自然なフィルを経てレゲエのリズムへと転換。Imu Samのスプリングリバーブを効かせたギターと厚みのあるベースが重なり、一曲の中で異なる表情を楽しめる構成となっていた。

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そして特筆すべきは、このBillboard Live TAIPEI公演当日に新曲〈Tell Me〉がリリースされたことだ。これまで同様の高い演奏力に加え、よりヒップホップ色を強めたサウンドは、今後のS.A.R.の進化を予感させる。国境やジャンルを越える音楽言語で、台湾におけるリスナー層をさらに広げていく存在として、再び台北のステージに戻ってくる日を期待したい。

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記事の作者

台北出生的散文女。依序著有《裙長未及膝》、《刺蝟登門拜訪》、《明天還能見到你嗎》。不寫書的時間是樂團小幫手,不在後台的時候,通常都在台下。