

Hitomi:
今回が、淺堤とBillboard Live TAIPEIによる二度目のインタビューとなります。
前回よりもさらに踏み込み、バンドとしての「淺堤」そのものについて話を聞いていきたいと思います。来年で、彼らは結成10周年という節目を迎えます。
淺堤:
気づけば、もう10年ですね。

Hitomi:
バンド結成のきっかけは、今でも覚えていますか?
淺堤:
僕たちは皆、高雄という街と深い縁があります。生まれ育った者もいれば、この街で学び、生活してきた者もいます。最初に音楽を始めたのも、高雄の大学コミュニティでした。
依玲は昔からソングライティングが好きで、ギターを弾きながら一人で曲を書いていたのですが、一人で歌うのはどこか孤独だった。だったら仲間と一緒に音を鳴らした方が楽しい、という自然な流れで、大学時代の友人たちとバンドを組むことになりました。
結成当初は「蔡依玲樂隊」という名前を使っていた時期もあります。ただ、もっとバンド全体を象徴する名前が欲しいと思うようになり、全員が好きだったイギリスのバンド Daughter の楽曲〈Shallows〉から着想を得ました。
そこに、高雄の街に多く存在する海沿いの堤防のイメージと、フランス語で堤防を意味する「Levée」を組み合わせ、最終的に「淺堤(Shallow Levée)」という名前に辿り着いたんです。
Hitomi:
フランス語を取り入れているのが、とても印象的ですね。
方博:
いつか、本物のフランス人に正しい発音で読んでもらいたいと思っています。

Hitomi:
(笑)それはぜひ映像企画にしてみたいですね。では、結成当初から現在に至るまでの中で、特にリスナーと振り返りたい作品やツアーはありますか?
淺堤:
2015年にバンドを結成し、翌年には初のEP『Demo.1』をリリースしました。収録曲の〈怪手〉は幸運にも、金音創作賞の「最優秀ロック・シングル」にノミネートされています。
当時の作品は、エコロジーや社会的テーマを多く扱い、台湾語での表現を軸にしていたこともあり、そうした文脈で僕たちを知ってくれた人も多かったと思います。
2017年にはEP『湯與海』を発表しました。フィジカル盤では、メンバー紹介をレシピの栄養成分表示のような形式でデザインするなど、遊び心のある仕掛けを取り入れています。
この作品タイトルは、後に僕たちが共同で立ち上げた会社の名前にもなりました。

Hitomi:
『湯與海』は個人的にもとても好きな作品です。高雄ならではの温もりや、揺らめくような空気感が詰まっていると感じました。
淺堤:
実は今でも、音楽フェスでは『湯與海』の楽曲をよく演奏しています。その後、2020年にファーストアルバム『不完整的村莊』を発表しました。このアルバムには、結成当初から当時までに書き溜めてきた10曲が収録されています。
当時は高雄と台北を行き来する生活を送っていたこともあり、都市間を移動しながら自分自身と向き合う感情を、歌詞として描きました。
続くセカンドアルバム『婚禮之途』は、友人の結婚式に参加した際の体験が出発点となっています。人生のフェーズが変わっていくことへの祝福や、そこに伴うさまざまな感情を音楽として届けたいと考えました。
この作品では、初めてクラウドファンディング形式での予約販売にも挑戦し、わずか1週間で大きな反響を得ることができました。それは僕たちにとって大きな励みとなり、リスナーとの距離をより近づけるきっかけにもなりました。
Hitomi:
淺堤とファンの関係は、本当に友達のようですね。今年初めに行われた「環島大亨2.0」ツアーでは、多くのリスナーが皆さんと一緒に台湾各地を巡っていたのが印象的でした。
ライブ後にも時間をかけてファンと交流する姿が、とても温かく、愛らしい現場だと感じました。
淺堤:
そうですね。僕たちは常に、従来のライブハウスの形式にとらわれない公演を模索してきました。台湾のさまざまな町を訪れ、リスナーと一緒に「家に帰る」ような感覚を共有したかったんです。
それは、土地の問題に関心を持ち、故郷を離れて生きる感覚を理解しているからこそ生まれた姿勢なのかもしれません。僕たちにとって、淺堤のリスナーは確かに友人のような存在です。
アルバムを発表して以降、より多様なステージに立つ機会にも恵まれました。高雄の「大港開唱」や台南の「浪人祭」はもちろん、韓国のGreenplugged、東京のBiKN Festival、シンガポールの華藝節など、アジア各地のフェスティバルにも出演しています。
中でも印象深かったのが、オーストラリアのアーティスト Jaguar Jonze との台北での共演です。文化的背景や音楽言語は異なりながらも、強い共鳴が生まれたその体験は、僕たちにとってまさにクロスカルチャーな対話でした。

Hitomi:
最近、日本でリリースされたベスト盤のアナログレコードが話題になっていますよね。このプロセスについて、ぜひ聞かせてください。
淺堤:
僕たちにとって、本当に胸を打たれる出来事でした。日本盤のベストアルバム『淺堤 Shallow Levée BEST COLLECTION』は、リスナーから特に愛されてきた楽曲を中心に、〈永和〉〈好不容易〉〈陷眠〉など、キャリアの異なるフェーズを横断する楽曲を収録しています。
これは単なる楽曲の集積ではなく、これまで歩んできた時間が、ひとつの“形あるもの”として結晶化した作品だと感じています。実は当初、ましてや日本でアナログ盤としてリリースすることは想定していませんでした。
市場の違いを理解し、翻訳を重ね、さまざまなパートナーと対話を重ねる過程は、自分たちの創作を改めて見つめ直す時間でもありました。「これらの楽曲は、日本のリスナーにどう響くだろうか?」と考え続けていたんです。
完成したレコードを手にした瞬間、これまでの努力と、支えてくれたリスナーの存在が一気につながったように感じました。
音質の調整、アートワーク、権利関係など、乗り越えるべき細部は多くありましたが、最終的な仕上がりには大きな満足感があります。僕たちにとって、この作品は“次の始まり”でもあるんです。

Hitomi:
日本とのつながりという点で、以前から Billboard Live というブランドに対して、何か印象や記憶はありましたか?
淺堤:
これはぜひ共有したいエピソードですね。初めて日本を訪れたとき、DSPSのギタリスト・詠翔(当時、日本でギターを学んでいました)と一緒に、Billboard Liveで伝説的なジャズ・ギタリスト、David T. Walkerのライブを観に行ったんです。
当時の僕たちはジャズに強く惹かれていましたし、彼がマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーの作品に参加してきた偉大なミュージシャンだということもあって、特別な体験でした。
美しく洗練された会場で、観客は皆きちんとした装いをして、優雅な空気の中で音楽に耳を傾けている。その空間には、ステージ上も客席も等しく音楽に没入し、真剣に向き合っている感覚がありました。
だからこそ、今回Billboard Liveのステージに立つ際も、同じ敬意と集中力を持って、足を運んでくださる皆さんを迎えたいと思っています。
Hitomi:
とても素敵なエピソードですね……。まさか、そんな形でBillboard Liveとの縁があったとは。
では最後に、来年の予定についても聞かせてください。
淺堤:
実は、来年の中頃に3枚目のアルバムをリリースする予定なんです。今回は、初めて海外のミュージシャンとコラボレーションした楽曲も収録されています。
ここ最近は本当に慌ただしく、今年は最初から最後まで走り続けてきましたが、新しい楽曲をたくさん用意しています。皆さんに届けられる日が、もう待ちきれません。

記事の作者
台北出生的散文女。依序著有《裙長未及膝》、《刺蝟登門拜訪》、《明天還能見到你嗎》。不寫書的時間是樂團小幫手,不在後台的時候,通常都在台下。
