

SOLE & THAMA 2025/12/19
期待。
クリスマスを目前に控えているせいだろうか、客席にはどこか温かな空気が漂っていた。アーティストの登場を待つその時間は、まるでクリスマスの訪れを心待ちにする感覚と重なっているようにも思える。会場では写真撮影、録音、録画が全面的に禁止されており、その分、この「期待」はわずかな緊張と抑制を伴って膨らんでいく。しかしだからこそ、客席にいる私たちはより強く、自分たちが特別な存在であると感じるのだ。この瞬間、この場所にいる者だけが受け取ることのできる贈り物が、確かにそこにはあった。
2017年、SOLEはTHAMAとの共作〈RIDE〉によって韓国音楽シーンに鮮烈な印象を残した。数多くの楽曲で共演してきた二人だが、台湾でのステージは今回が初となる。揃って身にまとったブラックの装いは、互いの呼吸の合った関係性を象徴するかのようで、独特で重厚な歌声によって、K-R&Bならではのロマンとスタンスを鮮やかに描き出していた。

観客席にわずかなざわめきが走る。SOLE と THAMA への想いを胸に押し込めたまま、観客たちは音楽とリズムで紡がれる、恋人たちの私的な囁きを迎え入れる。
先にステージに現れたのは THAMA。黒のジャケットに身を包み、ステージに立った瞬間、彼の落ち着きと鋭さを併せ持つ声が空間を貫く。〈Zack〉を歌い出すと同時に照明が落ち、雨の降る午後へと一気に引き込まれる。歌詞の通り、不在の恋人に向かって投げかけられる問い――「約束なしで、君は僕を見つけられる?」。
短い静寂ののち、背後から光が差し込み、〈Wind〉のイントロが流れ出す。午後の雨は、いつしか深夜の独白へと姿を変え、「いつ、どこにいても、君はそこにいる」という言葉が静かに囁かれる。

〈Real Thing〉のイントロが鳴った瞬間、空気は一変する。THAMA はすでにすべての煩悩を振り切り、解き放たれたように観客へ語りかける——「今、この瞬間を楽しんでいる。これこそがリアルだ」と。バンドメンバーもそのムードに呼応するように自然と身体を揺らし、まるで失恋の物語がひとつの終幕を迎えたかのように、人生の小さな不条理を抱えながらも、世界にはまだ光が差し込んでいることを告げている。
〈Real Thing〉の明るさを引き継ぐように披露された〈I’m Chill〉では、ヒップホップの要素が加わり、THAMA の異なる創作の側面が鮮明に浮かび上がる。これまでの楽曲よりもさらに低く、芯のある声でラップを繰り出し、観客に向かって堂々と宣言する。その広い音域と存在感は、歌詞からアレンジに至るまで一貫して示されており、〈I’m Chill〉という楽曲そのものが、彼のスタンスを体現するひとつのマニフェストであることを強く印象づける。

4曲を歌い終えたあと、THAMA は再びマイクを手に取り、中国語で観客に挨拶をした。スマートフォンに表示された文字を一つひとつ確かめながら読み上げるその姿には、どんな些細なことにも真摯に向き合う、控えめで誠実な魅力がにじむ。客席を埋めていたのは SOLE と THAMA の熱心なファンたちで、いつの間にか韓国語でのやり取りが自然に生まれ、その光景に THAMA 自身も驚きを隠せない様子だった。それはまさに、その場に立ち会った者だけが共有できる、ライブならではの温もりと魔法のような瞬間だった。

〈Cityboy〉のミステリアスなグルーヴは、THAMA による都市への観察眼を鮮明に映し出す。ベースとドラムを基盤に街の輪郭を築き上げ、その上でギターが問いを投げかける——雑多で密集した事象の中に答えを探そうとしながらも、結局は見つからず、それでも「なぜ」を問い続けてしまう感覚が音像として立ち上がる。
続く〈Have I Asked You〉は、スタジオ音源とは異なるアプローチで幕を開ける。ライブではドラマー SHINDRUM によるグルーヴィーなビートが先導し、〈Cityboy〉で都市に投げかけられた問いが、そのまま次の章へと持ち越されるように展開していく。THAMA はその流れを受け取り、都市の中で生きる心情を音楽として応答する。
いずれもドラマー SHINDRUM とのプロジェクト作品であり、一曲は都市そのものへの省察を、もう一曲は都市に身を置く個人の内面を描写する。二人が街を行き交いながら織り上げた音楽には、確かな調和と、都市的リアリズムが静かに息づいている。

〈be mine〉は、THAMA が先月 Jay Park と共にリリースした最新曲であり、この日のセットリストでは終盤に配置された一曲だ。ゆったりとしたテンポの演奏は、まるで都市を一周し終え、家路につく途中であえて歩みを緩めるような感覚を呼び起こす。立ち止まり、ゆっくり進むことを自分に許すことで、これまで見逃していた景色がふと立ち現れる——そんな余白を音楽が与えてくれる。
続く〈Do It For Love〉では、輪郭のはっきりとしたリズムが場の空気を切り替え、再び「恋人に語りかけるための部屋」へと聴き手を連れ戻す。軽やかなメロディと躍動するビートに感情を託し、THAMA はこのパートを明るく、そして前向きな余韻とともに締めくくった。

THAMA がステージを後にすると、SOLE は静かに、しかし確かな存在感をまとって舞台へと歩み出る。最初の一音〈ore ore〉が響いた瞬間、観客は草原を駆け抜けるような解放感へと導かれる。SOLE 特有の甘く、丸みを帯びた歌声は、会場全体に柔らかさと同時に芯のある強さをもたらした。
彼女に導かれるまま、草原の上で観客は歌い、踊り、それぞれが思い思いの時間を過ごすことができる。SOLE の魔法は、まさに彼女が歌い始めたその瞬間から発動するのだ。
続く〈ivory〉は、そこにいない恋人との、もう一つの対話を静かに始める。メロディはまるでハンググライダーのように、恋人のそばを滑空し、墜落の危機から彼女を救えるのはその人だけだと告げている。歌詞を超えて、ステージ上の SOLE はこう語りかけているかのようだ——「私は今どこにいるの? それでも、ついてきてくれる? いつか別れることがあっても、心の中にはずっとあなたがいる」。救いは、ただ恋人の存在そのものに委ねられている。

トークの場面では、SOLE は同じく中国語で挨拶し、会場の文化へ自然に寄り添いながら、観客との距離をさらに縮めていく。決して急がず、余裕を感じさせるステージ運びは、観客の心まで解きほぐし、客席には笑い声が広がる。韓国語でのやり取りに戻ると、彼女の甘い笑顔の奥にあるプロフェッショナリズムと礼節が、より鮮明に浮かび上がった。
〈GONE〉が始まると、楽曲にはヒップホップの要素が織り込まれ、失恋の中で「もっと欲しい」と願ってしまう意地と執着が描かれる。自尊心と愛情のせめぎ合い、「止めないで」という悲しみ。その言い切れなかった感情は、最後の高音にすべて託されたかのようだ。短くも濃密な一曲から続く〈Still LOVE〉は、まるで親友が失恋した友人を励ますように、ヒップホップとソウルの響きで背中を押してくれる。どんな困難も乗り越えられる、忍耐と信念を持ち続ければ、愛はやがて平穏と自由へと導いてくれるのだ。

〈Same〉の途中、同曲で共演している THAMA がステージに再び姿を現し、二人でのデュエットが実現する。これまで“不在の恋人”に投げかけられていた開かれた問いは、その瞬間、舞台上で一つの答えを得たかのようだった。二人の声が交互に行き交い、その光景は、映画『小姐と流氓』でスパゲッティを分け合う名シーンを想起させる。相手さえそこにいれば、どんなことでも乗り越えられる——そう信じさせるほど、調和の取れたハーモニーが会場を包み込む。
しかし、都市での恋愛は常にそう単純ではない。やがて〈Situationship〉が示すように、曖昧な関係性に直面する瞬間も訪れる。二人は歌声を通して、恋愛に付きまとう欲望と無力感を余すところなく描き出す。特に THAMA のパートにおけるメロディのうねりは、胸を締め付けるような葛藤を伴い、感情は何度も、何度も繰り返される。声が重なり合う中で、初めて気づかされる——多くのことは、自分の思い通りにはならないのだと。

クリスマスが近づく中、〈warm christmas〉もセットリストに加えられた。SOLE の温かな歌声に乗せて、冬の祝祭のぬくもりが客席へと静かに届いていく。その声には、人の心をそっと癒やす力があり、まさに雪中に差し出される一炭のような存在だ。続く〈still beautiful〉では、再び自分自身の部屋へと戻る。歌声の強い透過性によって、語りかける相手は恋人から“自分自身”へと変わっていく。歌詞では「あなたのおかげで、私の人生は輝く」と歌われているが、この夜に彼女が呼びかけていた“あなた”は、最も強く、同時に最も柔らかな自分自身の姿に重なっていた。
舞台は再び都市へと戻る。車の流れが絶えない喧騒の中で、〈Slow〉のサビは水のように流れ、深夜の静けさの中で浴槽に水を張る音を思わせる。その揺らぎの中で、人はこれまでの道のりを振り返り、今の自分にたどり着いた理由を考える。自分自身を抱きしめ、「急がなくていい、ゆっくり進むことも一つのリズムだ」と語りかける時間だ。心が満たされた後に届けられる〈Stay With Me〉では、天使のように厚みのある歌声が、観客を最も無邪気で楽しかった恋の記憶へと連れ戻す。甘さもほろ苦さもすべて味わい尽くすように、憂いを帯びつつもどこかいたずらっぽいギターに、ドラムが寄り添う。それはまるで放課後の帰り道、相手と走り回りながら交わした無邪気なやり取りのようだ。天使が語る最も純粋な願いは、この夜、何ものにも代えがたい感動として胸に刻まれた。

〈RIDE〉——SOLE が次の曲名を告げた瞬間、客席からは喜びの歓声が沸き起こる。THAMA も再びステージに加わり、会場全体でこの楽曲を歌い上げた。その光景は、陽光が差し込む午後に自転車を走らせるような情景を思わせる。空気はひんやりと心地よく、ムードもまた軽やかで、この夜を締めくくるにふさわしい一曲となった。
ステージを後にする直前、SOLE はおどけた表情で観客にウインクし、こっそりと「アンコールを忘れずに」と促す。その無邪気で愛らしい一面が、会場にさらなる親密さをもたらした。そして期待に応えるかのように、アンコール後、二人は再びステージへ戻り、THAMA の〈2G Love〉を披露する。それはまるで、演出の終盤に響く残響のように、恋人同士の問いかけと内省を再び呼び覚ますものだった。
観客がすべて終わったと思ったその瞬間、さらなるサプライズが待っていた。SOLE と THAMA はカバー曲〈Close To You〉を披露し、ラブレターを超えるロマンティックな余韻の中で、この夜を締めくくる。恋人だけが語り合える対話として紡がれた、この特別な時間に、静かで確かな終止符が打たれた。

公演が終わると同時に、観客の一人がすぐに SOLE のフィジカルアルバム『imagine club』を差し出し、サインを求めた。カーテンコールが終わり、照明が明るくなると、人々はゆっくりと動き出す。音楽が呼び起こした雨、午後、深夜、浴槽の情景は、その場から消えてしまったわけではない。ただ、それぞれの胸の中に静かにしまわれただけなのだ。
あの「期待」は、演出の終わりとともに消え去ることはなかった。形を変えながら、今もなお存在し続けている。
それはまるでクリスマスの贈り物のようだ。包装紙をほどいた後に残るのは、言葉を必要としない、静かな感情なのである。
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