

King Gnu、藤井 風、そして 9m88 を愛聴するリスナーに、ぜひ紹介したい存在がいる。東京発のバンド、WONKだ。
昨年3月、高雄で開催された「大港開唱」への出演をきっかけに、彼らの名前は台湾の音楽ファンの記憶に深く刻み込まれた。
同年8月、台北・Legacyで行われた単独公演は超満員。日本ではすでに高い評価を得ているバンドだが、メンバーのバックグラウンドを丁寧に辿っていくと、その成功が決して偶然や過剰なブランディングによるものではないことが見えてくる。WONKの歩みには、地面を踏みしめながら少しずつ積み上げてきた確かな実感がある。
東京の慶應義塾大学と早稲田大学に存在するジャズ研究会は、台湾の多くの大学サークルと同様に、人と人をつなぎ、音楽を共に演奏し、創作の言語を共有する場として機能してきた。
そこでドラマーの荒田 洸は、時間をかけて江崎文武、長塚健斗、井上 幹と出会っていく。4人はいずれも高度な演奏力を備えたインストゥルメンタリストであり、とりわけ江崎文武は King Gnu の常田大希と共に、実験的かつ迷宮的な音楽プロジェクト millennium parade(ꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄ) を展開してきた。
現在に至るまで、その挑発的な作品群は更新され続け、なかでも〈U〉は再生回数6,000万回を突破し、強烈な存在感を放っている。
WONKの最大の魅力は、日本という枠を軽々と越えていく音楽的好奇心にある。それは日本の音楽家たちが長年にわたり培ってきた美徳でもあるが、WONKはそれを「この世代ならではの形」で更新している。
その象徴的な例が、〈Sweeter, More Bitter〉のリミックスに、ロンドンを拠点に活動する音楽家 Oscar Jerome を迎えたことだ。Oscar Jerome は、現在のロンドン・シーンを語るうえで欠かせない存在であり、同時に、筆者Yenがイギリス留学時代に在籍していた先輩でもある。
このコラボレーションを通して強く感じるのは、優れた音楽や誠実な人間性は、国境やシーンを越え、さまざまなかたちで静かに、しかし確実に伝播していくという事実だ。
近年、日本のジャズ・フェスティバルやジャズ・シーンは目覚ましい変化を遂げている。その成熟と更新の過程のなかから、藤井 風(Fujii Kaze)や WONK のように、ジャンルを横断しながらも強い個性を放つ創作者たちが自然と生まれてきているのは、決して偶然ではない。
視線を台湾へ戻すと、WONKの「耳」は自然と Elephant Gym や 9m88 へと導かれていった。その選択は、台湾というシーンにおいても非常に大切にしたい姿勢だと感じている。
WONKはコラボレーションのたびに、相手の中に学ぶべきポイントを見つけ出し、それを静かに吸収しながら自らを更新していく。その積み重ねが、やがて音楽の中で確かな化学反応として立ち上がってくる。
余談として触れておきたいのは、フロントマンの長塚健斗(Kento)が、かつてフランス料理のシェフとして活動していたという事実だ。現在も YouTube では、自身のチャンネルを通して料理について語っている。
インタビューの中で彼は、料理と楽曲制作のあいだに明確な共通点があると語っている。素材を選び、構造を組み立て、最終的なかたちとして提示する——そのプロセスは、驚くほど作曲の思考と重なり合う。
WONKの音楽に感じられる緻密さとバランス感覚は、こうした異分野で培われた感覚とも、確かにどこかで接続しているのかもしれない。
3月21日、WONKは再び台湾を訪れる。
これまでとは異なり、今回は会場そのものが、日本的なフォーマルさとエレガンスをまとった空間として用意されている。
上質な料理とワインを味わいながら、長塚健斗が語る「料理と音楽の関係」を、身体で受け取る夜。
音と味覚が交差するその時間は、静かでありながら確かなエネルギーに満ちた体験となるだろう。
