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開演時、まだ佐藤竹善の姿はなかった。

最初の一曲〈Moonlight〉は、Neighbors Complainによるオープニング・アクトとして披露された。

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大阪出身の彼らは、メンバー全員が洗練されたファッションセンスを持ち、多層的なスタイリングや個性的なアクセサリーがひときわ目を引く。ストリート感のある装いと、City Pop や Neo Soul を基調としたサウンドが融合し、日本文化ならではの独自性を感じさせた。

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幕開けは、キーボードの木村音登によるボーカルから。爆発力のある力強い歌声でありながら、ダイナミクスのコントロールも非常に安定している。ギタリストの Gotti は、リズムの隙間を縫うようにフレーズを差し込み、ベーシストの Kash は滑らかなラインでグルーヴを支えつつ、確かな存在感を放つ。ドラマーの Taka は推進力のあるプレイで、現代的なビート感に加え、若いバンドならではの衝動的なエネルギーを楽曲に与えていた。

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ステージに対する初々しい緊張感から、次第に自己表現へと踏み出していく姿は、まさにバンドの成長期ならではの魅力である。

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〈Night Drivin’〉では、Gotti と Kash がステージを降り、客席の中でソロを応酬する場面も。Gotti のクリーントーンは、Chic の Nile Rodgers を初めて聴いた時を思わせる、透明感のあるガラスのような質感で、速いファンク・リズムの中でも軽やかに躍動する。Kash は、Jaco Pastoriusと同型のFender Jazz Bassを使用していた点も印象的だ。

特筆すべきは、全メンバーが卓越したコーラスワークを持っていること。バックグラウンド・ボーカルとして重なる瞬間には、往年の Bee Gees を想起させるほどの完成度があった。

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この流れを受けて演奏された〈Kiss & You〉は、Anderson Paakを思わせる現代的なブラック・ミュージックの質感に、色彩豊かなジャズ・ハーモニーを融合させた楽曲。随所に設けられた「間」やブレイクの中で、ギターのラインが軽快に跳ねる。

やがてリズムはレイドバックからスウィングへと転調し、現代バンドから一気に1930 年代のビッグバンド・ジャズへと景色が変わる。木村音登のスキャットと、ドラマー Taka との即興的な掛け合いが緊張感を高め、会場の熱気は最高潮に達した。

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完全に温まったフロアに、観客の歓声が響く中、佐藤竹善がゆっくりとステージへ登場する。

最初に選ばれたのは、Eric Clapton が 1996 年に発表した名曲〈Change the World〉。Babyface との共演によるライブ・バージョンでも知られるこの楽曲からは、日本における Eric Clapton の影響力の大きさが今なお感じ取れる。

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続いて披露された〈What’cha Gonna Do For Me〉は、“Queen of Funk” Chaka Khan が 1981 年に発表した AOR の名曲で、印象的なサビが耳に残る。

Chaka Khan が Rufus から、Eric Clapton が Cream からソロへと歩んだように、佐藤竹善もまた SING LIKE TALKING で築いた基盤の上に、ソロ・アーティストとしての道を切り拓いてきた。その共通項が、この夜の選曲にも重なって見える。

これら2曲では、佐藤竹善と木村音登がデュエットを披露。後進を導きながらも、楽曲に新たな奥行きを与えていた。若い世代が過去の音楽を現代的に再解釈し、その時代を築いたアーティストと共演する光景は実に象徴的である。若い声は名曲に新しい生命を吹き込み、名曲はまた「継承」という役割を担っていく。

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佐藤竹善は流暢な英語で挨拶した後、美しい発音の中国語で「謝謝大家,我是第一次來到台灣!」と語り、会場を沸かせた。カンペを見ながら一言一言丁寧に話す姿からは、語学への高い適性もうかがえる。

一方、木村音登も中国語で挨拶をすると、佐藤が「日本語より中国語の方が上手なんじゃない?」と冗談を飛ばし、会場は笑いに包まれた。

〈Blue〉は、サイケデリックで複雑なコード進行から始まる楽曲で、2005 年に佐藤竹善がソロ名義で発表した一曲。Neighbors Complainのコーラスが加わることで、スタジオ音源以上に厚みを増し、Bee Gees 的なハーモニーの魅力が際立った。

続いて、新プロジェクト「Joppa Leigh」を紹介し、〈Sing in the Dark〉を披露。City Pop や AOR、Soul の色合いを一度脱ぎ捨て、より現代的なポップ・サウンドへと踏み出した楽曲で、Elton John の無垢さと Tame Impala のサイケデリック・ポップが交錯するような印象を受ける。

Joppa Leigh の YouTube チャンネルでは、Joji や Bruno Mars といった現代ポップから、Roxy Music や Todd Rundgren といった 70 年代グラム・ロックまで幅広いカバーを聴くことができる。新しい音楽を吸収しつつ、過去から学び、自身の新たな立ち位置を築こうとする姿勢が明確だ。英語詞を歌う際の佐藤竹善は、軽やかで透明感のある響きを纏い、日本語歌唱時の壮大さとはまた異なる魅力を放つ。

〈Rise〉のイントロが流れると、客席からはすぐに気づいた観客の笑顔がこぼれた。

シンプルな言葉で「愛」を讃えるこのダンス・クラシックは、佐藤竹善の力強い歌声とバンドとの化学反応によって、現代に生きる楽曲として再構築されていく。

〈Just Once〉では、後の Joppa Leigh へとつながる萌芽が感じられ、ポップ・ミュージックと自身の関係性を見つめ直す過程が垣間見えた。

アンコールは〈Spirit of Love〉。今回は佐藤竹善のピアノ弾き語りに、Neighbors Complain がコーラスとクラップで参加するシンプルな編成。長い夜を経た観客は、改めて「声」という楽器の純粋な力に耳を澄ませる。

Journey、Mr. Big、Van Halen を思わせる明るく前向きなエネルギーに満ちたこの楽曲は、満場の合唱とともに、深い感動を残して幕を閉じた。

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