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音楽に救い上げられる夜 | Jeremy Quartusと鶴 The Craneを語る

2026.03.01

Music

caro

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今のポップミュージックは回転が速すぎる。メロディを覚える間もなく、次のバズり曲に塗り替えられてしまう。けれど、良い曲というのは日常のどこかの瞬間にピタリと張り付いて離れないものだと、私は信じている。なぜだか分からないけれど、どうしても頭から離れない、そんな曲がある。

Jeremy Quartusと 鶴 The Crane。この二人の最大の共通点は、その「飾らない」スタンスだろう。音楽で説教を垂れるつもりなんてさらさらない。ただ、都会の観察記録や、取るに足らない寂しさを、正直に歌の中に混ぜ込んでいる。

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Jeremy Quartus

以前の私は、Nulbarichというバンド名にそれほど強い印象を持っていなかった。あの日、イヤホンからランダムに流れてきた「TOKYO」を聴くまでは。 コンビニの中で、思わず立ち尽くした。脳が勝手に、2年前の東京・渋谷の夜へと私を連れ戻したのだ。終電を逃し、若い女の子二人で、誰もいない深夜のスクランブル交差点にいた。昼間の喧騒とは対照的な静寂を楽しみながら、他愛ない話や深い話を明け方まで語り明かしたあの時間。友人のスマホからBGMとして流れていたのが、この「TOKYO」だった。

その瞬間に気づいた。JeremyJQの音楽には魔力がある!! Nulbarichのリーダーであり、プロデューサー、ボーカリストでもある彼の楽曲には、R&Bやソウル、そして少しのヒップホップが溶け込んでいる。彼の音楽には、都会人特有の「少しの汗ばみと、涼やかな風」のような自由が宿っている。良い音楽に説明はいらない。それは直接、人生のどこかの一瞬とリンクする。

「人生が仕組まれた待ち伏せだとしたら、私たちはいつだって無様な姿を晒している。」

Jeremy Quartusは「Deep End」の中でこう歌う。「I bought a guitar to a gunfight(銃撃戦にギターを持って行った)」。このフレーズが脳内に映し出すビジュアルは強烈だ。火薬の匂いが立ち込め、弾丸が飛び交う戦場で、私たちの唯一の武器は、今にも弦が切れそうなギター一本なのだ。 悩みを知らない子供から、無理やり大人の深淵(Deep End)へと突き落とされる時、溺れるような恐怖はいつだって太陽より先にやってくる。けれど、JQの声は教えてくれる。たとえ底なし沼にいても、隣で一緒に踊る誰かがいれば、流れ星だって私たちのわがままのために歩みを止めてくれるはずだと。 これは「成功への道」を説く歌ではない。打ちのめされて地面に倒れている時、一本の煙草を差し出しながら、一緒に朝日を待ってくれるような、そんな歌だ。

鶴 The Crane

ここ数年の台湾音楽を語る上で、鶴 The Crane を避けて通ることはできない。彼を知るということは、単に一人のアーティストを知るというより、ある種の「ステータス(状態)」に出会うような感覚に近い。今の台湾音楽シーンにおいて、彼の存在は少し異質だ。彼の音楽は芸名の通り「鶴」のように悠然としていて、絶妙な距離感を保っている。クールなルックスも魅力的だが、何より重要なのは、トラックの隅々に隠された職人技とも言えるこだわりだ。

裏方のプロデューサーとしてキャリアを積み上げてきた彼の経歴は興味深い。彼には独特の「レイドバック(松弛感)」がある。誰もが先を争って目立とうとする時代に、彼は「不介意(気にしない)」と歌い、正直にその無関心をさらけ出した。 2023年、アルバム『TALENT』で金曲奨の「最優秀中国語男性歌手賞」と「最優秀新人賞」にノミネート。同年の金音奨では、迷わず「最優秀新人賞」と「最優秀R&Bアルバム賞」の二冠をさらっていった。けれど実は、2016年からすでに彼は電子音楽やR&Bのカテゴリーで頻繁にその名を連ねていたのだ。

「ポケットは空っぽでも、マインドはリッチに」

この曲の最も魅力的な部分は、自虐的なジョークのような歌詞にある。「Sitting in my limo, I guess you never will notice me. Or maybe something smaller like CRV.(リムジンに座っているけれど、君は気づかないだろうね。それか、もっと小さなCRVみたいな車かもしれない。)」 あえて逆を行くようなこの感覚こそが、彼を唯一無二の存在にしている。 平凡な日常を「洗練」へと昇華させる彼のプロデュース能力は素晴らしい。この曲は、その年の「最優秀R&B楽曲賞」にもノミネートされた。この曲を聴いていると、たとえ世界中が私を認めてくれなくても、車の中で自分勝手に踊っていればいいじゃないか、と思えてくる。現実は厳しくても、音楽さえ流せば「自分って最高にクールだ」と思える瞬間、皆さんにも心当たりはないだろうか?

自由と洒脱は、Billboard Live TAIPEI にある!

東京の「自由」を代表するJQと、台北の「洒脱」を代表する鶴 The Crane。二人がイヤホンの中を飛び出し、Billboard Live TAIPEI のステージでついに相まみえる。 音楽だけで真実を語る二人が集う夜。そのライブはきっと、あの夜の渋谷の空気のように、涙が出るほど心地よいものになるだろう。

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