日本のヒップホップシーンを俯瞰すると、都市や地域文化の差異に応じて、それぞれが独自のスタイルを確立してきました。その広大な地図の中で、日本の西南に位置する孤島「沖縄」は、本土とは異なる歴史的背景と人文環境を持ち、今や独自のヒップホップ・フレイバーを開花させています。

これは、日本のヒップホップ界において極めて異彩を放つ存在であり、現在のメインストリームを牽引するAwich、唾奇（つばき）、OZworldといった実力派アーティストもここから輩出されています。本特集では、この沖縄という土地が育んだ唯一無二のヒップホップの姿を探るべく、選りすぐりの沖繩出身ラッパー10組を紹介します。南の島に響く、ディープで独特なフロウにご注目ください。

1. 柊人

日本の音楽シーンから熱い視線を集める、沖繩出身の叙情派ラッパー／詩人、柊人（しゅうと）。彼は、誠実で飾らない言葉と真摯な歌声を通して、生活のありのままの姿や、人間の心に宿る最もリアルな感情を繊細に描き出すことに長けています。

這是對饒舌歌手柊人 (Syuto) 介紹的後續內容翻譯。

🌎 英文翻譯 (English Translation)

Following the release of his breakthrough track "Sukinakoto" (好きなこと, Doing What I Love) in 2021, Syuto resonated deeply with listeners through lyrics that closely mirrored the emotional landscape of the younger generation. He actively collaborates with numerous Okinawan-based musicians, including prominent Japanese rappers like Awich and CHICO CARLITO, seamlessly blending island culture, soul, and genuine emotion into his music. This has cemented his place as one of the most representative voices in the contemporary Japanese music scene.

Subsequently, he has participated in high-profile projects such as Red Bull RASEN and THE FIRST TAKE, demonstrating an undeniable presence defined by powerful live energy and a distinct flow. (On a side note, we highly recommend checking out his recent appearance on Red Bull 64 Bars; it not only highlights his already notable singing ability but also reveals a surprisingly strong rap foundation.)

🇯🇵 日文翻譯 (Japanese Translation)

2021年に代表作**「好きなこと」をリリースして以来、彼は若い世代の心境に寄り添った歌詞で大きな共感を呼びました。また、AwichやCHICO CARLITO**など、沖繩出身の著名なラッパーを含む数多くの地元音楽家と積極的にコラボレーションし、島の文化、ソウル、そして真摯な感情を音楽に融合させています。これにより、彼は現代日本の音楽シーンで最も象徴的なアーティストの一人としての地位を確固たるものにしました。

その後もRed Bull RASENやTHE FIRST TAKEといった企画に立て続けに参加し、その強烈なライブエネルギーと独自のフロウによって、替えのきかない存在感を発揮しています。（特筆すべき点として、彼の最近のRed Bull 64 Barsへの出演は必聴です。元々評価の高かった歌唱力に加え、驚くべきラップスキルを目の当たりにすることができます。）

さらに、柊人は近期に自身の全新EP『ありのまま』をリリースしました。これは非常に温かみのある作品集であり、EPのタイトルは、彼が日本各地のツアーで好評を博してきた自身のライブシリーズの名称でもあります。そして今回、彼は12月5日に098 OKINAWA DAYシリーズの一環として、バンド編成を携えてBillboard Live TAIPEIのステージに初登場し、このソウルフルなライブパフォーマンスを再現します。

柊人 - 好きなこと Remix feat. Awich & CHOUJI

柊人 prod. by Leofeel｜Red Bull 64 Bars

2. Awich

以前、日饒（にちらっぷ）特集の**「入門編」でご紹介した「日本のラップクイーン」Awich**も、沖繩を代表する最も象徴的なラッパーの一人です。彼女の基本的な紹介については、本シリーズの以前の記事をご参照ください。今回の項目では、彼女と沖繩の繋がりに焦点を当ててご紹介していきます。

自身の米国留学経験を背景に持つ彼女の視点から見ると、アメリカの黒人文化であるヒップホップは、沖繩という文脈において、より複雑な意味合いを持つのかもしれません。長期間にわたる米軍占領下にあった沖繩には、かつてアメリカ本土と同様の人種差別が蔓延していました。そのような環境で暮らす沖繩の人々は、同じく差別に晒されていた黒人米兵に対して、ある種の共感を抱くことができたのではないでしょうか。

Awichもまたこの理を深く理解しており、彼女自身、「日本の中の沖繩」という、より深い差別の構造連鎖を理解する黒人コミュニティの中で育ちました。したがって、Awichが歌い上げるヒップホップは、沖繩という独自の土地において、複雑な歴史と共感の中から自然と育まれてきた、リアルな声なのです。

彼女が引き継いでいるのは、戦争と占領の記憶から目を背けず、自らが問題の一部となることを拒否し、答えを求め続けるという、沖繩人特有の**「強靭さ」です。彼女の「Revenge」や「Queendom」**といったシングルに滲み出る複雑な心情が示すように、彼女が口にする復讐、そして愛憎の入り混じった感情は、すべて沖繩のため、差別構造に立ち向かうため、そしてすべての女性のための「愛と自由」のために向けられています。

Awich, 唾奇, OZworld, CHICO CARLITO - RASEN in OKINAWA (Prod. Diego Ave)

Awich - Revenge

3. 唾奇

「ラップを書くことは、詩を書くことに等しい」—これは、**唾奇（つばき）**に対する多くのリスナーの評価です。この評が示す通り、彼の音楽は常に霊性（スピリチュアリティ）、詩情、あるいは人生と生命に対する深い洞察に満ちています。その中でも「歌詞」こそが、彼が最も称賛される武器です。優しくも率直な彼の声と相まって、彼は歌うたびに聞き手の心の最も深い場所まで入り込むという稀有な能力を持っています。

彼は、まず著名な音楽プロデューサーSweet Williamとの共同アルバム***『Jasmine』で一躍名を上げました。その後、実質的な初のソロアルバム『道 -Tao-』、そして今年リリースされたニューアルバム『Camellia』*に至るまで、長年の活動を経て、彼は沖繩のみならず日本を代表する「メロー系ラッパー」**の一人となりました。

唾奇の音楽スタイルは、多くの場合、Lo-fi、Jazz、Soul、R&Bといった要素を融合させています。歌詞のテーマは、日常、愛、孤独、故郷沖繩、そして人間的な葛藤など多岐にわたり、その温かさの中には計り知れない強さが宿っています。深夜、孤独な時、あるいは疲れている時に、リスナーに温もりと安らぎをもたらしてくれる作品群です。（筆者も夜中に一人、静かに唾奇の音楽を聴くことがよくあります！）

唾奇は沖繩の地元アーティストとの数多くのコラボレーションに加え、近年も常に高みを目指し続けています。今年はニューアルバムのリリースと同時に、年末に日本武道館のステージに立つことも発表されました。

また、特筆すべき興味深いエピソードとして、ニューアルバム収録のシングル**「Ghost」のミュージックビデオが、特別に台湾**でロケ撮影されています。ぜひMVをチェックして、唾奇の音楽をさらに深く知ってください！

DJ RYOW『all green feat. 唾奇』

唾奇 - Ghost Prod.hokuto

4. OZworld

象徴的な杖、鼻ピアス、ブレイズヘア、そして華やかなメイクアップなど、OZworldは登場するだけで観客に強烈な印象を残す存在です。

先に紹介した沖繩のラッパーたちとはやや異なり、OZworldは自身の音楽に、新世代特有の世界観、SF、スピリチュアルといった要素を頻繁に取り入れ、彼独自の「OZworld」宇宙を構築しています。さらに彼は絶えず革新を追求するラッパーであり、音楽面では、沖繩の伝統音楽要素とTrap、Drill、Rage、エレクトロニックミュージック、EDMなど、様々なジャンルとの融合を非常に大胆に試みています。

彼自身のクリーンでクリア、かつ非常に突き刺さるような歌声と歌唱力が相まって、その音楽は常に彼だけの**"オンリーワン"な味わいを醸し出しており、「Gear 5」や「NINOKUNI」**などがその代表作です。また、ビジュアル面でも独自の美意識や、時に中二病的なアイデア（笑）を持っており、MVには幻惑的、未来的な要素を取り入れたり、彼自身のバーチャルキャラクターを創造したりすることで、その個性をさらに最大限に発揮しています。

もちろん、OZworldは創作においても一貫して沖繩との繋がりを保っています。彼の最新の創作シリーズ**「369（ミロク）」では、最初の章である「369ノ3」において、同じく沖繩出身のAwich、CHICO CARLITO、唾奇という三人のアーティストを招き共同制作を行いました。彼らは沖繩のサウンドを象徴する三曲のヒップホップ音楽を書き上げました。中でも、CHICO CARLITOとのコラボレーション曲「弥栄LIT（いやさきリット）」のMVは、皆で楽しく酒を酌み交わす乾杯をテーマに出発点とし、沖繩という土地、ひいては人々の明るく、素朴な一面**をリスナーに見せています。

OZworld / Gear 5 feat. ACE COOL & Ralph（Prod. FOUX）

OZworld / 弥栄LIT feat. CHICO CARLITO（Prod. Foux）

5. CHICO CARLITO

CHICO CARLITOは、今回ご紹介する中でも最もハードコアで、最も「戦闘力」の高いラッパーの一人かもしれません。「強い野心」と「負けず嫌い」こそが、彼の音楽から我々が常に感じ取る精神です。

CHICO CARLITOの音楽は、多くの場合、純粋かつ真摯です。洗練されたラップスキルを通じて歌い上げられるのは、彼の人生における闘争の哲学、社会の写実、あるいは愛、感謝、そして故郷の土地についてです。彼の言葉の端々からは、常に覚悟と決意を感じ取ることができます。

CHICOの闘争哲学について語るなら、その核心は**「沖繩の精神」と「上京の野心（じょうきょうのやしん）」の融合にあるでしょう。CHICO CARLITOが一貫して強く信じてきたのは、故郷の沖繩から上京し、全国の舞台で「勝つ」ことを熱望する、その強烈な企図心（アムビション）**です。（もちろん、彼は東京でも非常に優れたフリースタイル・バトルMCとなりました。）

彼が追求する**「勝利」は、決して単独で勝ち取るものではありません。シングル「Ryukyu Style」**の中で彼が絶えず伝えようとしているのは、「皆で一緒に勝つ」という核心的な精神です。これこそ、CHICO CARLITOが貫く「琉球の心」だと私は思います。自分が上り詰めたら仲間を引っ張り上げ、自分が倒れたら仲間に引っ張り上げてもらう。

東京にいても、喧騒の渋谷を歩いていても、心は（沖繩の）国際通りと共にある。彼が目指すのは、沖繩の仲間たちと共に高め合い、成果を分かち合う、「私」から「私たち」への集団的な精神であり、それは非常に感動的で高揚感に満ちています。CHICO CARLITOのその他の代表作には、「一陽来復（いちようらいふく）」や「memory trigger」**などがあります。

CHICO CARLITO/一陽来復 ft.CHOUJI,唾奇 Beats by Sweet William

CHICO CARLITO / Ryukyu Style

6. RITTO

石垣島出身で、現在は沖繩・那覇を拠点に活動するラッパー／詩人、RITTOは、沖繩ヒップホップ界の伝説的なラップクルー**赤土（AKAZUCHI）を牽引する存在です。彼の音楽は、単に沖繩を代表するものではなく、あるいは単なる「ヒップホップ」というジャンルに還元されるものでもありません。むしろ、「人間（NINGEN）」としての存在のあり方を表現しています。人間性と社会の矛盾をテーマにした代表作「NINGEN State of Mind / pt-II」**は、沖繩の音楽ファンにとって最も象徴的な意味を持つクラシックの一つと言えます。

RITTOの音楽は、迷いや戸惑い、そして優しさと強靭さが共存する、リアルな人生を描き出します。日本の伝説的なヒップホップ・グループ THA BLUE HERBのBOSSは、彼を「初めて自分に歌心（うたごころ）を聞かせてくれたラッパー」だと絶賛しました。

彼は多くの沖繩出身ミュージシャンとも協業しており、同じく沖繩出身のヒップホップクイーンAwichは、コラボ曲**「NINGEN State of Mind II Remix」**の中で、彼のクルーと彼らが活動拠点としていた沖繩のライブハウス「Love Ball」を「ヒップホップの子宮」と表現しました。この言葉一つからも、RITTOがこの沖繩という土地に与えた影響と、その存在の重みが伝わってきます。

近年、彼はMiss Ko（葛仲珊）、The Crane、Gummy B、PinkChainといった台湾やアジアの音楽家とも数多くのコラボレーションを行っています。そして今年の12月5日、彼は特別なチャプター「NINGEN State of Mind」を携えて098 OKINAWA DAYシリーズの一環としてBillboard Live Taipei のステージに立ちます。ソウルと真実に満ちたライブパフォーマンスで、南の島の熱量と誠実さを届けます。

RITTO【MV】NINGEN State of Mind pt-II ／ pro.OLIVEOIL

RITTO & PiNkChAiN & Sogare - HUELUI (Official Music Video)

7.TORAUMA

青森県出身ながら、現在は沖繩に居を構え、同地で活動を続けるTORAUMAも、今や沖繩を代表するラッパーの一人です。彼は、沖繩で非常に指標的なクルー**「604」の一員であり、HANGが設立したヒップホップレーベル「Final Weapon Company」のメンバーでもあります。これら二つの集団からは、TOCCHI、HANG、MuKuRo、hokutoなど、数多くの優秀なラッパーやプロデューサーが輩出されており、以前ご紹介した唾奇**も元々ここから輩出されました。

TORAUMAの音楽に話を戻すと、おそらく彼の名前（トラウマ）の通り、彼は人生や命に対しての内なる葛藤と悟りを頻繁に書き綴ります。不安定さの中にも力強さを秘めた歌声とメロディ、そして心に響く歌詞は、長年連携しているプロデューサー「詩奏（しそう）SEESAW」が打ち鳴らすビートと相まって、常にリスナーの心に直撃し、深く感動を与えます。筆者にとって、TORAUMAの歌声と音楽には、まるで人々に「救済（サルベーション）」を与えるようなソウルが宿っていると感じられます。代表作には「TSUBAKI（椿）」や「Sol」**などがあります。

さらに、TORAUMAは、その圧倒的な感染力と感情が爆発するライブパフォーマンスでも称賛されています。元々心に響く楽曲に、彼の魂を絞り出すような、一切の留保のない演奏スタイルが加わることで、常に深い感動を与えます。彼は台湾とも良好な関係を築いており、近年すでに数回台湾でのライブを行っています。筆者自身も何度か体感しましたが、本当に衝撃的で、音楽を聴くだけでなく、機会があればぜひ一度そのライブの熱量を肌で感じてみることを強くお勧めします。

TORAUMA / TSUBAKI（椿）[ beat. SEESAW ]

TORAUMA / Sol [Prod. CraftBeatz]

8. CHOUJI

石垣島出身のCHOUJIは、現在の沖繩ヒップホップシーンにおいて、非常に早い時期から耕作を始め、多くの後進の音楽家を育成し、この地で奮闘し続けているラッパーです。沖繩のヒップホップ環境への貢献、あるいは沖繩のヒップホップを代表するという点において、CHOUJIこそがこの称号に最もふさわしいラッパーの一人であると言えます。

CHOUJIの音楽は、曲風も語られる内容も幅広く、リラックスできる小品、沖繩の人文風情、大麻関連のフライトソングがある一方で、多くの意欲的で奮い立たせる作品も存在します。

音楽スタイルにおいては、沖繩の歴史的背景に影響されているのか、CHOUJIはウェッサイ（西海岸）やG-Funkなどのスタイルを好んで音楽に融合させています。もちろん、濃厚な沖繩の要素やエキゾチックな雰囲気も絶対的に含まれています。一見すると強面な外見を持ちながらも、CHOUJIの音楽を聴く時はいつでも、彼の軽快なメロディとラップに合わせてプレッシャーなく体を揺らすことができ、まるで沖繩のビーチでチルしているかのような気分になります。代表作には**「奮闘中（ふんとうちゅう）」や「バッズマン」**などがあります。

CHOUJIは地元において非常に尊敬されている先輩でもあります。沖繩の著名なラッパーたちとのコラボレーションに加え、彼は後進の育成やリソースの提供を惜しみなく行っており、自身の力で周囲の人間が共に成長し、成功することを願っています。彼自身も、驚くほどの創作量を維持し続けることで自ら手本を示しており、興味のある方はぜひその多作ぶりに注目してみてください。過去から現在に至るまで、CHOUJIは沖繩への深い愛を常に持ち続け、独自の方法でこの土地のヒップホップに貢献し続けています。

CHOUJI - 奮闘中 beat by mosaic404

CHOUJI - 生きてゆく

9. Rude-α

一部のリスナーは、ヒップホップではない場面で無意識のうちに**Rude- $\alpha$（ルードアルファ）の作品を耳にしたことがあるかもしれません。今回ご紹介する沖繩出身ラッパーの中でも、彼は日本のポップス（J-POP）**とのクロスオーバーが比較的多く、その音楽スタイルがヒップホップに限定されないクリエイターです。

Rude- $\alpha$は、ラッパーから主流音楽界へとクロスオーバーし、若くして名を上げた好例と言えます。キャリアの初期はバトル出身で、2014年に初出場した『高校生ラップ選手権』で準優勝を果たしました。2018年にリリースした初のEP『20』は、iTunesヒップホップアルバムチャートで即座に1位を獲得し、同年にはアメリカの音楽祭SXSWに招待されてパフォーマンスを行いました。

その後も、アニメ『Dr. STONE』の主題歌**「LIFE」の制作に参加したり、ヒットシングル「It's only love」を引っ提げて早期にTHE FIRST TAKEのステージに登場するなど、彼の活躍は広がり、単なるラッパーから主流音楽界に進出した全方位型ミュージシャンとなりました。Rude- $\alpha$の魅力は、その強靭で説得力のある声質にあると私は思います。優れた歌唱力と相まって、彼は歌声の中に豊かな感情を伝えることができ、自身の確かなラップの基礎は、ラップ時にも格好良い一面を発揮します。その他の代表作には「Paradise」や「Wonder」**などがあります。

キャリアの早い段階で様々な場所へ活動拠点を移したにも関わらず、Rude- $\alpha$は今も沖繩と多くの繋がりを持っています。自身が沖繩出身であることを頻繁に口にするだけでなく、楽曲にも現地の要素を取り入れています。彼の音楽に漂う淡い南国的な雰囲気は、間違いなくこの土地の影響でしょう。シングル**「うむい」は、沖繩の過去の戦争をテーマにし、平和のメッセージを伝えようとしています。また、最近では「沖繩統合医療学院」のテーマソング「ゴールテープ」**の制作にも参加するなど、故郷との交流を続けています。

さらに、ぜひRude- $\alpha$の10年前の作品「CoCo Okinawa」のMVを探してみてください。沖繩のムードを存分に感じられるだけでなく、当時は「R’kuma（ルクマ）」という名前で活動していた、非常に初々しいOZworldの姿も見ることができます。

Rude-α 『LIFE』

Rude-α 『It's only love』

10. Yo-Sea

今回の沖繩特集でご紹介する最後のアーティストは、日本のヒップホップシーンとR&Bシーンを股にかける、現行最強の美声の一人であるYo-Seaです。

口を開いた瞬間にリスナーの耳を魅了するYo-Seaの最大の武器は、その非凡でいて、極めて唯美的な歌声と歌唱力でしょう。彼の歌声は水のように、常に自然に人々の耳に流れ込み、音調は高いながらも負担を感じさせません。その人柄も同様に、音楽と共に常に落ち着いた、柔和なオーラを纏っています。

R&Bを得意とする彼は、様々な曲風や雰囲気に応じて自在に形を変えることができ、ラップと歌の間を自由に移行します。この能力により、彼は多くのラッパーとのコラボレーションに頻繁に参加し、楽曲にハイライトを加える大きな武器となっています。さらに、ラッパーだけでなく、Yo-Seaはその歌声によって宇多田ヒカルや藤井風といった著名な音楽家とも共演する機会を得ています。代表作には**「Flower」、「かけ足族」、「Moonlight」**などがあります。

若くして東京に進出し活動を始めたYo-Seaですが、今も故郷沖繩との繋がりを常に保っています。2023年にリリースされたアルバム***『Sea Of Love』*は、海をテーマにしており、その一部では故郷沖繩への想いが語られています。楽曲の中では、彼の人生経験を通して、より大きな愛と包容力が表現されており、「海」**はその後、Yo-Seaの音楽に繋がる重要な要素となりました。

現在、個人的な活動が順調な段階にあるにもかかわらず、ツアーを行う際には必ず沖繩を最終公演地に組み込むなど、彼の故郷に対する重視と愛がそこから見て取れます。

Yo-Sea - Moonlight

Yo-Sea - かけ足族

以上の紹介を読んで、皆様が沖繩のヒップホップについてより深い理解を得ていただけたなら幸いです。この記事を執筆する過程で、筆者自身も多くの文献を読み込み、この土地の文化的文脈やヒップホップが成長した歴史、あるいはこの土地から生まれる音や言葉にどのような心持ちで向き合うべきかについて、多くの考えを深めることができました。

私にとって、沖繩のヒップホップは日本のヒップホップ音楽の中でも非常に美しい一部です。私自身、これまでこの地域の多くの音楽家たちから深い影響を受けてきました。ですから、もし興味を持っていただけたなら、ぜひさらに時間をかけてこの土地のより多くの「声」を探求し、沖繩ヒップホップの持つ美しさを深く感じ取っていただけることを願っています。